星の唄
「ありがとう。」
そう言って奏空はいつの間にか煎れた紅茶を結衣に出す。
奏空の笑顔はやっぱり結衣の好きな笑顔より優しく見える。
奏空はゆっくりと話しはじめた。
「奏は家族全員がプロジェクト関係者なんだ。」
「全員?」
それは結衣と同じだった。
「うん。だから必然的に被験者に選ばれた。まだ幼いけど…政府としては危険なデータも取りたかったんだろうね。反対の声は揉み消され、特例として実験が開始された。」
「………。」
「だけど奏は今だ実例がない10歳だったんだ…。」
「10歳…?」
¨特例¨は結衣も同じだった。
けれど結衣は希望して被験者となっていたし、規定通りの12歳で被験者になった。
当時…現在も12歳未満では記憶が戻らない可能性が高い為、被験者の対象からは外されていた。
奏は家族全員がプロジェクト関係者というだけで、規定の年齢にも満たず、おそらくは希望もしていないのに被験者にされたのだろう。
「奏は1年の実験が終わり、真実を知って記憶を閉ざした。そのままどんな現実も受け入れず、自分だけの夢を見始めたんだ…。」
「……。」
奏空の顔はいつの間にか辛そうな顔になっていた。