星の唄


前に来た時は扉に鍵が掛かっていた。
今日は扉が開いたまま、白衣を来た人達がバダバタと重たそうな機材を持ち、行き来していた。

二人は邪魔にならないように中へ入って行った。


中に入ると奏が目覚め、白衣を着た人達に囲まれていた。
それを心配そうに見ている奏空が見える。

「奏空。」

結樹の呼び掛けに奏空は振り向き、二人に笑顔を見せた。
奏空の目は真っ赤だったが、笑顔はいつもよりも幸せそうだった。

「奏は大丈夫か?」

「たぶん大丈夫。だけど精密検査だけはしないとね。結衣ちゃん、ありがとう。」

奏空は結樹の後ろにいた結衣に笑顔を向けた。
結衣は奏空のいつもよりも優しい幸せそうな笑顔が眩しくて、無言で頷いた。


「奏空さん、ちょっと…。」

「あ、はい。今行きます。…ごめん。結樹、結衣ちゃん、後でまた行くよ。」

白衣の人の呼び掛けで、二人に笑顔で断りを入れ、奏空は奏の横に戻って行った。

「結衣、どうする?」

「…二人とも忙しそうだし…とりあえず戻ろうか?」

奏はまだ白衣の人達に囲まれていた。
顔を見れば元気そうなことも解る。

結衣が奏を見ていると、目が合い、奏はまた笑顔を見せた。
夢と同じ、奏空に少しだけ似ている、とびきりの笑顔。
結衣も笑顔を返す。


少しだけ安心した結衣は結樹と奏の部屋を跡にした。


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