星の唄
『この奥?大丈夫よ。この奥は鍵もなくて、奏空か奏が一緒なら他の人でも入れるわ。』
楓は笑顔で答えた。
その答えに奏はホッと安堵の息をつく。
「それじゃ、お兄ちゃん行こうよ。」
奏空に向かって奏は声をかけた。
けれど、奏空も結樹も鈴音も楓を見たまま、動くことはなかった。
なぜなら、楓は突然亡くなっていた。
本当ならば、話したいことも、聴きたいことも、まだたくさんあったのだろう。
急に楓を前にし、まだ三人は戸惑っていた。
三人が動かなければ結衣も奏も勝手に動くわけにはいかない。
『さ、気持ちは解るけど、もう行きなさい。ここにはいつまでもいられないんだから。』
動かない奏空達を見てなのか、楓は再び声をかけた。
そういえば、深い夢の中は身体に悪いと奏空や結樹が話していたのを結衣は思い出した。
結樹と鈴音はハッとして我に返り、頷く。
しかし奏空は楓を見たままで、ポツンと声を漏らした。
「楓さん…俺…聴きたいことがあるんだ…。」
奏空の言葉に楓は哀しそうな顔をする。
『ごめんなさい。何も答えてあげられないの。』