星の唄
「きっと哀しい時や苦しい時だよね?」
「え…?」
結衣の言葉は当たっていた。
奏空は何度か楓に星の唄を聴いた。
けれど、実は奏空がはじめて楓に星の唄の話を聴いたのは、両親を亡くし、足の手術が終わった後だった。
心にぽっかりと穴が空き、哀しいのか苦しいのかそれすらも解らなかった。
*
楓に星の唄を教えてもらったのは、空が哀しいくらい青く綺麗に晴れ渡る日だった。
奏空が知らない部屋のベッドの上で目を覚ますと傍には楓がいた。
楓は満月の補佐をしていて、幼い奏空ともよく遊んでくれていた。
今が夕暮れ時なことを奏空は不思議に思う。
「おはよ。」
「おはよう…かえでおねえちゃん、パパとママは?」
奏空の8歳の誕生日。
産まれたばかりの奏を楓に預けて、奏空は両親と遠くまで朝から星を見に出掛けていた。
その時、急に空が暗くなり、両親に抱き締められたのが最後の記憶。
気付けば知らないベッドの上。
幼い子どもでなくとも、突然何が起きたのか解らなくなるだろう。
「ぼくなんでねてるの?おほしさまは?」
奏空は次々に楓に聴いていく。
けれど、楓はどう話せばいいのか、まだ悩んでいた。
「ねぇ?かえでおねえちゃん…?」
いつもならすぐに答えてくれるはずなのに。
何も答えない楓に奏空は不安になる。
夕暮れはいつの間にか星空に変わり始めていた。