星の唄
「パパとママは別のところにいるよ。」
楓は覚悟を決めたのか、笑顔で奏空に答える。
それは精一杯の嘘だった。
「なんで?おほしさまは?」
今にも泣き出しそうな奏空。
星が好きで、行く前からすごく楽しみにしていた。
もうじき星も見えなくなるかもしれないから…と晴と満月が無理に時間を作っていたのも楓は知っている。
「パパとママ、ちょっとお星様見れなくなっちゃったんだって。」
「やだ!やくそくしたんだよ!パパとママはどこ?!」
8歳の子が簡単に言うことを聴くはずがなかった。
奏空はベッドから出ようとして異変に気付いてしまった。
「…?あれ?あしがうごかないよ?」
さらに不安な顔を見せる奏空。
「…足はね、疲れちゃったんだって。今お休みしてるの。」
「なんで?ぼくつかれてないよ!!…えいっ。うごけ!!」
一生懸命足を動かそうとする奏空。
だけど動かせる足はなかった。
痛みは薬が効いていて無いのだろう。
奏空は足がないことに気付いていなかった。
「ね、奏空。今日はもうお星様が出てるから明日にしよう。パパとママも寝てるかもしれないから。ね?」
「やだ!!どうしてうごかないの?なんで!」
奏空の瞳には涙が滲み始めていた。