星の唄
「奏空。いい子にしてないとパパとママ、お星様を見に連れて行ってくれないよ?」
「ぼくいい子にしてたもん!!」
「ほんとかな?」
「ほんとだもん!」
本当なのは楓だって知っている。
奏空は奏が産まれるまで、ずっとおとなしく待っていたし、お手伝いもよくしてくれていた。
誰から見ていてもいい子だったと思う。
けれど、もう両親には逢わせてあげられないのだった。
「じゃあきっとお迎えに来てくれるよ。だから今日は奏空ももう寝ようか?ほら、見てごらん?お星様も出てるよ?」
「うん…。」
奏空は楓の言葉に元気なく答える。
きっと、どうして今すぐ来てくれないのか、まだ納得していないのだろう。
「よしよし。いい子だね。」
そう言いながら奏空の頭を楓は撫でる。
これくらいしか楓のしてあげられることはなかった。
「奏空、おやすみ。」
いつの間にか泣き出し、泣きつかれた奏空は夢を見始めた。
もう一度、頭を撫でて楓は奏空の部屋を跡にする。
(今日のところはごまかせたけど…。)
いつまでもごまかせるはずがない。
楓もそれは解っていた。
その日、楓が廊下の窓から見上げた夜空には、丸い月が浮かんでいた。