星の唄
ソラは慌てて部屋に入りユイを見た。
ユイは今までこんな慌てたソラを見たことがなかった。
少し…怖いくらいだった。
無意識にユイは机から少し離れた。
「…どう…かしたの?」
「あ、ごめんね、驚かせて。部屋、散らかしたままだったから。」
笑顔でそう言ってはいるがソラの顔はいつもと違う。
ソラは机に近付き、書類集めた。
「…何か見た?」
トントンッと書類を整えながらソラはユイを見ずに聞く。
「…な、なにも。」
「…そう。」
空気重さに負けて、ユイは嘘を付いた。
ホントは先程読みかけた“黒い星プロジェクト計画”がなんなのか…聞きたかった。
でも。
聞いてはいけない気がした。
「そうだ。今日は本も置き忘れていたね。今日はこれ。」
ソラが差し出したのは綺麗な空色の厚みのない本だった。
「それ。僕の友達が描いた絵本なんだ。あげる。」
その瞬間、ソラはいつもの笑顔に変わっていた。
「…ありがとう。」
「うん。じゃ、戻るね。」
満足そうにソラは笑い部屋をあとにした。
先程の書類はすべて持ったままだった。