星の唄


「半分の生徒は¨碧い星¨の記憶が戻り、次のプログラムへ移りました。」

「後の半分は?」

「今、夢を見ているところです。」

「そう…。」


被験者の記憶が突然戻ると記憶障害が起き、悪い場合、長い間眠り続けてしまうことがある。
それを避ける為に夢を見せている。
プロジェクトの説明だけでは補えない内面への配慮だった。


「はい。それと…彼女も記憶が戻り始めました。もう大丈夫です。」

「…あら。ありがとう。」

定例会議の中。
リーダー補佐の鈴音は現状を報告した。

¨彼女¨とはおそらく結衣のことだろう。
舞衣の顔から少し安堵が見えた。
奏空も少し安心ができた。


奏空は結局のところ、結衣には会えていない。
最悪の事態を想定しまい動くことが出来なかった。

自分でも情けないとは思いつつも、何も出来ないでいた。


「それじゃ、各自通常通り業務をお願いね。解散。」


奏空がボーッと考えている間に他の報告も終わり、舞衣の笑顔は会議の終わりを告げた。


< 68 / 189 >

この作品をシェア

pagetop