星の唄
二人が不自然な理由を奏空は知っていた。
もちろん何も気付いていない、聞いていないフリをして扉を開けた。
でも本当はすべて聞こえていたのだった。
二人が、結樹が隠したから知らないフリをした。
¨眠り姫¨
そういう噂があるのも知っていた。
噂というものは嫌でも聞こえて来るもので、避けられるはずもない。
彼女は奏空にとって大切な人でも、他の人から見れば興味の対象にしかならないだろう。
噂になるのは仕方がないことだった。
¨眠り姫¨と呼ばれる奏(カナデ)は被験者であり、このプロジェクトの被害者だった。
彼女は10歳で被験者になり、記憶を戻す際に記憶障害が起きた。
原因は他の要因も考えるられるが、幼過ぎることが問題とされた。
彼女は記憶も意識も閉ざしたまま。
この7年間、一度も目覚めていない。
奏空は奏が目覚めないのは自分の所為だと思っていた。
自分が彼女に近付きすぎたからだ…と。
だから結衣にも会いに行けなかった。