星の唄
「とりあえず、自己紹介かな?」
彼はユウキと名乗った。
¨結ぶ¨という字に¨樹木の樹¨で¨結樹¨。
彼はそう言いながら、突然現れたペンと紙で字をスラスラと書いた。
夢だからなんでも出てくるようだ。
父親から一字もらってるんだ、と楽しそうに話している。
彼はきっと両親に大切に育てられたんだろうと思える笑顔で、ユイには少し羨ましくも感じていた。
「もちろん、ユイにも漢字があるよ。」
「…え?私にもあるんですか?」
今まで名前を入力するのに漢字を使ったことはなかった。
そもそも漢字などの¨字¨について考えたこともなかった。
「うん。あ、そうか、知らないよね?というか¨字¨を気にしたことないよね?うん。ごめん。」
そうかそうかと一人納得して彼は話を続けた。
ユイの思っていたことは勘違いではないようだ。
考えたりしたことがないのが正解なのだ。
そして、彼がそれを知っているとすれば、おそらくは¨名前¨も記憶の一部として何かプログラムされているに違いない。
そう考えればつじつまを合わせることもできる。
「ユイはね、¨結ぶ¨という字に¨衣¨で結衣。結衣の名前は母親の字が一字入っている。」
まだ知らない家族の字が入っている。
たったそれだけ。
顔も知らないはずなのに、すごく嬉しくなったのは忘れている記憶のせいだろうか?