星の唄


「うん。俺の悪友。」

「悪友…?」

「おう。」


悪友と言われるとソラからのイメージとは違う。
結衣の中のソラは優しい星月夜みたいだった。
彼にはその悪友がとても大切なんだろう。
嬉しそうに笑って言った。


「じゃ、今日は家の中の探索にしよう。気になったら触ってごらん。」

「触るんですか?」

「ああ。そしたら記憶が少し夢になる。今日は残り時間からして、たぶん2つか3つくらいかな?」

「2つか3つ…。」

「これだ!!って思ったら見ようとしてごらん。」

「はい。」


それじゃ。と言って結樹はポンッと姿を消した。
夢とは便利なものだと改めて感じた。

気になるものと言われても知らないことばかり。
まだ自分の名前しか知らないのだ。


(…ここが私の家なんだ。)


捨てた家族も住む家。

結衣を捨てた家族がいるはずなのに、なぜだか暖かい匂いがした。
この暖かさと…どちらが本当なのだろう?

結衣はとりあえず部屋を見渡した。
ここが結衣の部屋で間違いない。

とりあえず自分の好きなところからが基本だろう…。
結衣は本棚を探しはじめた。


< 83 / 189 >

この作品をシェア

pagetop