星の唄
結樹が話していた通り、結衣の中に記憶が浮び始めた。
すでに結衣が生まれた時には碧い星が悲鳴をあげていた。
突然の豪雨。
異常な気温。
夜空の星も輝く日が少なくなっていた。
世界の学者や研究者達はなんとか碧い星を守ろうとあらゆる調査や実験を行っていたが、何一つ成果は出ていなかった。
それでも僅かだが星が見える日もあり、結衣は毎日家の展望室にある大きな望遠鏡で星を探していた。
「結衣?またココなのね?ただいま。」
結衣は学校から帰るなり、展望室に篭っていた。
特にその日は、珍しく星が綺麗に見えていた。
突然展望室の入口から顔を覗かせたのは、ふわふわで桜色をした短い髪と優しい笑顔の女性。
結衣の母親だった。
気のせいか、今日の顔はいつもと違っている。
「おかえりなさーい…ん?」
結衣の目は母親の他に、綺麗な蒼い髪を捕らえた。
「だぁれ?」
一瞬蒼い髪がビクッと動き、ゆっくりと顔を見せた。
それは、すごく目の綺麗な青年だった。
「結衣、少しの間、お兄ちゃんと星を見ていてくれるかしら?お母さん出かけなくちゃならないの。」
「はーい!」
「ありがとう。じゃ、お願いね。」
母親はそれだけ言うと展望室を後にした。
こんなに急ぐ母親は珍しい。
よほど大切な用事なのだろう。
置いて行かれた青年はただぼんやりとしていた。