星の唄
青年は結衣の兄と同じ18歳くらいに見えた。
本来であれば結衣の兄は19になるのだが、寮に入り1年ほど家には戻って来ていない。
青年は展望室に入ったものの、動かず空を見上げていた。
展望室の空は星がよく見えるように透明だった。
「ほしがすきなんですか?」
結衣の問い掛けに、彼は初めてちゃんと結衣を見た。
そして彼は首を横に振った。
「きらい?」
その問い掛けに青年は一瞬哀しそうな顔をして頷いた。
「なんで?」
星を毎日探すほど好きな結衣には嫌いな理由が解らなかった。
青年はその問い掛けにまた哀しそうな顔をして、今度は何も答えずに空を仰いだ。
結衣は答えを待ったが、彼が答える様子はなかった。
(…こんなにほしはきれいなのに。)
「あのね。きょうはいつもよりほしがたくさんみえるんだよ。」
しばらくして、結衣がぽつんと零した言葉に青年は初めて笑顔を見せた。
「今日は星月夜だから。」
独り言みたいな彼の声は、透き通るように綺麗で、まるで星の中に溶け込んでしまいそうにも思えた。