星の唄


第一講義室に着くとそこにはすでに多くの生徒がいた。
入口に『前から順に座って下さい』と貼紙があったが、中を見ると最前列には誰も座らず後ろの方に固まっていた。

(…前って書いてあるのに。)

結衣は案内通り最前列の端に腰をかけた。
窓があれば窓際にしたのだが、この部屋にも窓はなかった。


しばらくして、チャイムが鳴り、一人の女性が入ってきた。
朱色のショートヘアで濃い灰色のスーツを着ている。
スカートから伸びる脚はスッとしていて羨ましい程細い。

「では講義を始めます。その前に…案内を見ず最後尾に座っている方。退出して下さい。」

大きな講義室に響き渡る綺麗な声。
でもそれは冷たく切り捨てるようにも感じる。
しかし、誰もその声に動くものはいなかった。
動けなかったのかもしれない。
彼女はそれを見て、もう一度さらにキツく言い放った。

「最後尾、退室なさい!!」

その声に、今度は一人の生徒が立ち上がり抗議の声が上がった。

「…なぜですか?教官は教える義務があるはずです。」

教壇前に立つ女性は大きく溜息を付いた。


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