星の唄
本来、被験者から希望を受けることは出来ない。
鈴音が話した通りプロジェクト被験者は試験に合格すればある程度の権限などが与えられる。
また、家族にも莫大な保証金が入る。
それゆえ、希望者を募れば後を絶たない。
けれど結衣の家族は全員関係者だった。
関係者は全員この建物に篭りきり。
ということは結衣一人で家に住むことになる。
12歳の結衣が一人で住むことは難しかった。
さすがに希望を通さないわけにはいかない。
それに結衣は星が好きだった。
だから、星を守る為に出来ることを探していた。
「なんだ。もう思い出したのかぁ。」
「思い出すように言ったのはお兄ちゃんでしょう?」
「それもそうだな。」
結樹は楽しそうに笑って言った。
その笑い方は二人で悪戯した後の笑顔と同じだった。
「それならもう夢もいらないか?」
「ううん。聞きたいことがあるの。」
「聞きたいこと…?」
そう、結衣には聞きたいことがあった。
結樹もなんとなく解っているのか、一瞬、難しい顔をしていた。
「ソラのこと…。」
「……。」
「あのプログラム部の室長さん。お兄ちゃん知ってるでしょ?私、夢で会ったの。」
「……。」
「ソラと話しがしたい。」
ソラと話しがしたい。
それが今結衣の希望だった。