華の咲く場所
「さぁ、参りましょう、ご案内いたします。」
そこまで勝手にことを勧められたところで、ようやく我に帰る。
「ちょ、ちょっと待って!どうしたっていうのです、一体・・・!部屋の移動って、どういうことです!?」
私の反応を、茶英はびっくりしたような顔で見てきた。
「おや、紅藤様からお聞きでないですか?」
「は?紅藤様?」
さっきまで考えていた、忘れようとしていた男の名前を出されて、驚くほど自分の心が揺れる。
「紅藤様より、麗蝶様を紅藤様付きにしろ、ということで承りました。このことで、麗蝶さまの地位が上がれましたので、お部屋の移動が可能となったのです。」
「え?そんなことができるの!?」
「はい。まぁ特別ですが。その分、紅藤様には追加料金をお支払いいただいております。」
追加料金、だと?なんだそれは、あのお人は、そんなにすごいお人だったのか?
ひょうひょうとして何を考えているのか読めないような人だから、何をしている人なのか、全く推し量ることができなかったのだけど。
突然のことに一人の世界に入りきり考えをめぐらす私に、茶英は一瞬いつもの茶英に戻って言った。
「貴方には身に余るほどの光栄な出来事なんですから、しっかりと受け止めるがよいでしょう。さあ、さっさと動いて下さい。お部屋の移動ができないでしょう」
そして廊下に出ると、先程のような・・・他の女たちに接しているような態度に戻り、さっさと歩いて行ってしまった。
「・・・!待って・・・!」
置いていかれる、と気付いて小走りに駆けて追い付いた私だったけれど、それをわかっているはずのに、茶英は少しも歩を緩めようとはしなかった。
・・・中身はいつもの茶英だと理解した瞬間だった。
*
そこまで勝手にことを勧められたところで、ようやく我に帰る。
「ちょ、ちょっと待って!どうしたっていうのです、一体・・・!部屋の移動って、どういうことです!?」
私の反応を、茶英はびっくりしたような顔で見てきた。
「おや、紅藤様からお聞きでないですか?」
「は?紅藤様?」
さっきまで考えていた、忘れようとしていた男の名前を出されて、驚くほど自分の心が揺れる。
「紅藤様より、麗蝶様を紅藤様付きにしろ、ということで承りました。このことで、麗蝶さまの地位が上がれましたので、お部屋の移動が可能となったのです。」
「え?そんなことができるの!?」
「はい。まぁ特別ですが。その分、紅藤様には追加料金をお支払いいただいております。」
追加料金、だと?なんだそれは、あのお人は、そんなにすごいお人だったのか?
ひょうひょうとして何を考えているのか読めないような人だから、何をしている人なのか、全く推し量ることができなかったのだけど。
突然のことに一人の世界に入りきり考えをめぐらす私に、茶英は一瞬いつもの茶英に戻って言った。
「貴方には身に余るほどの光栄な出来事なんですから、しっかりと受け止めるがよいでしょう。さあ、さっさと動いて下さい。お部屋の移動ができないでしょう」
そして廊下に出ると、先程のような・・・他の女たちに接しているような態度に戻り、さっさと歩いて行ってしまった。
「・・・!待って・・・!」
置いていかれる、と気付いて小走りに駆けて追い付いた私だったけれど、それをわかっているはずのに、茶英は少しも歩を緩めようとはしなかった。
・・・中身はいつもの茶英だと理解した瞬間だった。
*