華の咲く場所
彼と再び会って、気丈にふるまえる自信が、今の私にはなくなっていた。

今まであれだけ気丈に一人で生きてきたというのに、紅藤様に会うと、あの人を忘れて、ただの女になり下がる。

枇杷だけでは足りなかったから、茘枝に手を伸ばした―――その時。

『バン!!』

何の前触れもなしに、個室の扉が開いた。

紅藤様はこんな開け方しないとても紳士な方だから、茶英だってその辺はわきまえていて他の誰かに見られていなければわからないけれどこんなところでそんなことはしない。

なんてはしたないのだろう。

誰だろうと思って視線をやると、そこには、私がこうなるまでは一位の座にいたお姉さまと、その取り巻きたち―――私の嫌な予感は、当たってしまったらしい。

「・・・麗蝶。おまえ、そこで何をしているっていうの?」

折角美しいお召しものを着て、美しく飾り立てているっていうのに、普通にしていれば見目麗しい顔は醜く歪んでいて、まるで般若か何かのようだ。

「私は、茶英に導かれるまま、ここにおりますが。」

「馬鹿言わないで!!」

『パン!』

突然私の頬を名前も知らないお姉さまがか弱い掌で張ってきた・・・舌でも噛み切ってしまったらどうするのだ、まぁ少し切れただけらしく、口内に鉄の味が広がっただけだったが。

私が舌を噛み切って死んでしまえば、それはそれでこの人たちにとってはいいのかもしれない。

「おまえ、どうやって紅藤様に取り入ったというの!?全く、とんでもない阿婆擦れ淫乱女ね!とっととその場所をお渡し!紅藤様のお相手は、私が努めましょう!」

あのお客は気難しくてかなわないからと、私を無理やり紅藤様につけたのは一位の座だったお姉さまのくせして、なんてこと言うのだこの女は。

頭の足りていない女たちは、この状況になった説明をどう受けてどう解釈したのだろう・・・。

まぁ私も突然のことで混乱は消えていないがとりあえず、紅藤様が勝手にでもやったことは事実であって、紅藤様が私を望んでるのは確かであって・・・結局間違った方向に解釈していることには変わりないのではないか。





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