華の咲く場所
紅藤様は、私を深く抱きなおすと、慎重に聞いてきた。

「今でも、その男に復讐しようと思っているのかい?」

「いいえ?」

するりと、自然に口から言葉が出た。

紅藤様に会ったことで、紅藤様のためにした決心で、私は、私の心の整理を付けることができた気がする。

紅藤様はいささか拍子抜けしたような顔をした。

「だって。今、落ち着いた心で考えると、あの人は実際、ひどい人だったと思うのです。・・・恋は盲目とは、よく言ったものですわね。もう・・・そんな過去にとらわれて生きていくのはやめようと思えたのです。・・・紅藤様のおかげで。」

私のきっぱりとしたその口調に、安心をおぼえたらしい紅藤様は、いつもの調子に戻っていた。

「・・・では、約束通り、この世の底で、お前のことを全て受け止めよう」

「・・・嬉しいですわ」

紅藤様は、湯につかったまま、また私を抱いた。




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