華の咲く場所
Ⅲ
ある秋の夕暮れ。
寝室に、昨日やりかけたまま置きっぱなしになっていた刺繍を取りに来ると、私は紅藤様の眼鏡いれを落としてしまった。
『かしゃん』
いつも枕もとにあるそれに、洋服の袖を引っ掛けてしまったのだった。
「あらあらいけない・・・っ」
急いで拾い上げて、中に眼鏡が入っていないことを確認して、ふう、と胸をなでおろすと、中敷がぱこ、と小気味いい音を立てて、外れてしまった。
・・・ああ、謝らないと・・・。
新し物好きな紅藤様が、なぜかずっと使い続けている眼鏡いれだったから、怒るだろうな、なんて考えながらとりあえず中敷を戻そうとすると、なんだか、おかしかった。
中敷の下には、外から見ると全くわからないようにうまく作った、小物を入れる空間があった。
偶然できたというわけではなく、中敷の下にもしっかりと布が張られていて、しっかりとした小物入れになっている。
もしかしたら、これはもともと小物入れだったのかもしれない。
紅藤様が眼鏡いれに使っているから、そう錯覚しただけなのかもしれない。
何故だかわからないけれど嫌な予感がしながら中敷の中を開けてみると―――
「・・・・・・!?」
その中にあったものを呆然と見ながら、とりあえず中敷をもとに戻した。
けれど、あまりの驚きに、身動きが取れなくなって、「朱蘭様?」戻ってこない私を心配した召使いが呼びに来るまで、眼鏡いれを握りしまたまま、寝台に腰かけていた。
*
寝室に、昨日やりかけたまま置きっぱなしになっていた刺繍を取りに来ると、私は紅藤様の眼鏡いれを落としてしまった。
『かしゃん』
いつも枕もとにあるそれに、洋服の袖を引っ掛けてしまったのだった。
「あらあらいけない・・・っ」
急いで拾い上げて、中に眼鏡が入っていないことを確認して、ふう、と胸をなでおろすと、中敷がぱこ、と小気味いい音を立てて、外れてしまった。
・・・ああ、謝らないと・・・。
新し物好きな紅藤様が、なぜかずっと使い続けている眼鏡いれだったから、怒るだろうな、なんて考えながらとりあえず中敷を戻そうとすると、なんだか、おかしかった。
中敷の下には、外から見ると全くわからないようにうまく作った、小物を入れる空間があった。
偶然できたというわけではなく、中敷の下にもしっかりと布が張られていて、しっかりとした小物入れになっている。
もしかしたら、これはもともと小物入れだったのかもしれない。
紅藤様が眼鏡いれに使っているから、そう錯覚しただけなのかもしれない。
何故だかわからないけれど嫌な予感がしながら中敷の中を開けてみると―――
「・・・・・・!?」
その中にあったものを呆然と見ながら、とりあえず中敷をもとに戻した。
けれど、あまりの驚きに、身動きが取れなくなって、「朱蘭様?」戻ってこない私を心配した召使いが呼びに来るまで、眼鏡いれを握りしまたまま、寝台に腰かけていた。
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