華の咲く場所
そして彼は私に愛してた、と告げた・・・。



と、そこで気がついた―――どうして、『愛してた』なんて・・・過去形なの。

そこから私の頭は機械よりも素早い動きを伴って紅藤様の思考を考え、最悪な考えにたどりついた。


「いや・・・!」


私が小さく何かつぶやいたことに気がついて、隣に座っていた優しい、母のような召使いが私に声をかけた。

「朱蘭様・・・?」

「紅藤様、死んでしまう・・・・・・!早く、早くいかなければ・・・!!」

今までおとなしく車の中に座っていた私が突然そう叫び出すから、驚いた顔をして、でも為す術がなかったらしく、私を固く固く抱き締めてきた。

「大丈夫ですよ、お館様が、こんな大切で仕方のないあなたを残して、旅立たれるわけがございません・・・!」

その言葉に、いましがたまでどうにか止まっていた涙が、また滲んできた。





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