華の咲く場所

紅藤様は、私や屋敷の人間たちの心配をよそに、するすると回復していって、一週間後には自宅療養を許されてしまった。

医者の先生方も、これにはびっくりしていたけれど、紅藤様は

「俺は何分今まで仕事で頑丈になってきているんだ、あれくらいじゃあ死ねないよ」

と周りの心配を無効化させるようなことを笑顔で言いのけた。

病院にいるころから、私は献身的に紅藤様のお世話をした。

「朱蘭様、お願いです、お休みくださいませ・・・!」そんなふうに屋敷の人間総出で懇願されるほどだったみたいで、それを見たときには、笑えてしまった。

このあたり一帯の頂点に君臨する紅藤様が撃たれた、という事件は彼の部下やその他の人間に大きな衝撃を走らせたらしい。

だがどう彼は処理をしたのかまでは知らないが、その事件は彼がピストルの手入れ中に起こった事故ということで片づけられていた。

紅藤様は、私がしたことに対して何も言わず、私が謝るたびに、「あれは事故だったのに、何故朱蘭が謝る」と呆けて見せた。

撃たれた衝撃で、記憶がおかしくなってしまっているのかしら、と考えるほど、紅藤様の発言の徹底ぶりは半端なかった。

1か月もする頃には、医者に、もう病院は必要ない、とまで言われてしまったから、私も屋敷のものも驚かないわけにはいかなかったけれど、紅藤様は完璧に全快していた。

仕事に行かれるようになって、寝込んでいるときよりもきらきらとして見える紅藤様を見て、この人に仕事は必要なのだな、と改めて思う。

私一人を養うことを苦と思わないあたり、その気持ちの表れなのだろうな、と思う。





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