華の咲く場所
・・・この人は・・・私を抱いている間、私に愛しいと体現してくれている間、そんなことを。

勝手に決めてしまったことに対して、どこか腹立たしさを覚えた。

「お前に撃たれた時も・・・自然とそれを受け止めて・・・でも、それでもお前が呼ぶ声が聞こえて・・・俺の手にお前の涙が伝うのを感じたから、俺のことをまだ必要としてくれるのだろうかと、自惚れて戻って来てみたんだ。・・・実際こうしてお前はそばにいてくれ続けた。

 ・・・なぜ、お前は、俺を撃った後だというのに、そんな顔をして俺のそばにいてくれるんだ・・・?」

彼は突然不安げな声を出して私の頬に手を添えて、優しく・・・いつものような強引さはなく、上向かされた。

一気に話されたことが、まだ心の中で消化されていないけれど・・・でも、最終的な結論は、考える必要すらなかった。

だって、私はあの瞬間、悪魔に取りつかれていたようなもの、だと思うから。

あれは、心の弱い、ちゃんと整理をしないまま紅藤様のものに来てしまった、私が犯した過ちなのだから・・・それ以前に、紅藤様から離れてだなんて・・・生きていけないだろう。

私が黙ったままだったことに一層の不安を覚えたのか、

「朱蘭・・・?」

弱弱しく聞いてくる紅藤様に、庇護欲をかきたてられた・・・と同時に、先程の腹立ちも一層掻き立てられた。


「・・・ばかなひとですわ。」


びく、と私の頬に触れる手が震えたのがわかったけれど、容赦しない―――というか、爆発しそうだったのだ、もうせき止めてなどやらない。





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