華の咲く場所
きっと、生まれてくる子は、彼にそっくりだと思った。

こんなにも私が恋焦がれているから、子も、彼にそっくりになってしまうと思う。

紅藤様は私に似た女の子がいいなんて言っていたけれど・・・さて、どうかしら。



きっと、子が生まれても、この幸せは続くだろう。

どんな、日々にしようか。

それは、私と彼と、これから生まれてくるこの子が作るもの。

「王子様と御姫様は幸せに暮らしましたとさ」

そんなありきたりな言葉で、完結できないような、素晴らしい日々にするのだ。

紅藤様は言ったもの、私の身分とか、そんなの関係ないと。

そんなの気にしてる暇もないくらい、彼は愛してくれるだろう。



「さて、どうなるかしら?」

紅藤様の腕の中で、独り言のように呟いた私に、彼は怪訝な顔をする。

「何のことだ?」

考えていることが口に出てしまうのは、イヤな癖だ。

「いえ、少し考え事をしていて・・・」

そこで、異変に気がついた。

「どんなことだ?」

私が考えることを何でも聞き出そうとする紅藤様の口元に手を持って行って、先をやんわりと抑える。

「とりあえず、この子が出てきてからにしましょうか」

はぁ、とため息ついて彼がげんなりという。

「出てきたらって・・・また待ちぼうけか、俺は」

「いえ?」

本格的に痛み出してきたお腹を抱えて言う。

「今、出てきたい、って、主張を始めましたの、御医者様を呼んでくださらない?」

「・・・・・・。・・・・・・っ・・・・・・!!」

私の落ち着き具合と比喩を用いた言葉のせいで、理解するのに時間がかかったらしい紅藤様は、なぜか自分が顔を真っ青にして、飛び起きて医者を呼びに行った。

「さて、どうなるかしら、ねぇ」

生まれてくる子に、思いをはせた――――――。



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