【短編】今夜、きみと最後のキスを
今思えばあれは……亡くなる一週間くらい前だったはず。


純くんは……わかってたのかな。

自分がもう、長くないってこと。


だから、あたしに直樹くんのこと頼みたかったのかな──。





何日か経った頃。


お父さんのお見舞いが終わって、中庭のベンチに座っている彼を見つけた。


声をかけようか、それともそっとしておこうか悩んだけど。


やっぱりほっとけなくて黙って隣りに座ると、あたしの顔を見た彼は、いつものいたずらっ子みたいな笑顔で微笑んだ。


……少しだけ、元気がないような気がしたけど。

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