【短編】今夜、きみと最後のキスを
「里佳の気持ち、わかるよ。……俊太の気持ちもわかるけど」


いつの間にか、肩に置かれていた手が離れていた。


でも、その手があたしの頭を優しくなでていて、なんだかあたしの方が泣きそうだった。



「里佳。時間、大丈夫?」

「……あ、もう行かなきゃ」


「じゃ、またね。俊太のことは気にしなくていいから」

「……ごめんね」


「またね。里佳」

直樹くんはにっこり微笑んで手を振った。


「うん、またね……」

直樹くんの笑顔につられるように、あたしも笑って手を振った。




──あたしが直樹くんに励まされてどうするのよ。


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