【短編】今夜、きみと最後のキスを
「俊太くん、あのね」


あたしはそれから、俊太くんに気づかれないようにちょっとずつ距離を詰めていった。


「こないだのこと、謝ろうと思って」

本当にちょっとずつ。

「言い過ぎたなぁ、って思ってて……」



その時だった。


「直樹にーちゃん!」


俊太くんはあたしの向こうに明るい声を向けた。


振り返ると、いつものように柔らかな笑顔をした直樹くんがいた。



「二人とも、こんな所でなにして……」

言葉が途切れ、柔らかな笑顔が急に険しいものに変わった。

< 26 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop