【短編】今夜、きみと最後のキスを
屋上でデート
お父さんの退院の日が二日後に決まった。
「よかったね」
「うん。ありがとう」
病院の屋上にあるベンチに直樹くんと並んで座っていた。
少し高い場所にあるこの病院の屋上からは街並みが見渡せる。
その奥には海が見えて、ちょうど夕日が沈んでいくところだった。
海がオレンジ色に染まっていて、波がキラキラ光っている。
「腕、大丈夫?」
海に見とれていたら返事が遅れてしまった。
「え? あ、うん。もうすっかり」
包帯も取れて、傷痕も残らなかった腕を目の前にかざした。
──あっ。
俊太くんを助けた時にできた“名誉の負傷”はもうすっかりよくなっていた。
……ま、ただのすり傷だしね。