【短編】今夜、きみと最後のキスを
「……ケホ……ごめん」
──重ならなかった唇。
「大丈夫?」
目を開けると、まだ唇が触れそうな距離に直樹くんの顔があった。
「もう戻……」
ドキドキしながら立ち上がろうとしたけど、ぎゅっと抱き締められて身動きが取れない。
「なおっ……」
「ちょっとだけ、こうしてて」
耳に当たる胸から聞こえる鼓動は、あたしと同じくらい早く鳴っている。
「ね、ねぇ?」
「ん?」
この体勢で無言でいることが恥ずかしくてあたしは声を上げた。