【短編】今夜、きみと最後のキスを
入院してると言ってもいつも元気な直樹くん。


いたずらして怒られたり、俊太くんみたいな小さい子の面倒を見てたり。


おじいちゃんと将棋してたり、おばあちゃんのおしゃべりにつき合ってたり。



明るい直樹くんしか知らない。

元気な直樹くんしか知らない。


あんな直樹くんは──知らない。




その時、手術室のドアが開いた。


顔を上げると小川さんが立っていた。

赤いライトはまだ点いたままだ。




「……いつこうなってもおかしくない状態だったんだ」


小川さんはあたしを近くの長椅子に座らせて、自分も隣に座った。

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