【短編】今夜、きみと最後のキスを
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誰もいない静かな海岸を
直樹くんと二人、並んで歩いてる
彼に視線を向けると
それに気づいてふわりと微笑んでくれた
太陽のような力強い笑顔ではないけれど
月のように、星のように
静かに、優しく照らす光みたいだと思った
「里佳」
あたしの名前を呼ぶその声も、また優しい
あごに指をかけられて近づいてくる顔に
あたしは小さく微笑んで、そっと、目を閉じた──……