【短編】今夜、きみと最後のキスを
彼と初めて会ったのは、病院の廊下だった。
お父さんが運ばれたと聞いて慌てて駆けつけたあたしが、彼とぶつかってしまったんだ。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
“お父さんが倒れた”ということで頭がいっぱいだったあたしはその時、彼いわく、今にも泣き出しそうな顔をしていたらしい。
「ごめん! どこかぶつけた?」
泣きそうな顔をしていたあたしを見て、彼は慌てて手を差し出した。
「違うんです……大丈夫……」