【短編】今夜、きみと最後のキスを
「あの……ごめんなさい」

「ん? なにが?」

「ぶつかっちゃって……。あなたの方こそ、大丈夫ですか?」


パーカーにニット帽をかぶった彼。


お見舞いの人なのかな?


とりあえず骨折とか、病気してる人じゃなくてよかった……。



「あぁ……。オレは大丈夫。気にしないで。……ところで、どこか行く所だったんじゃない?」

「あっ! ご、ごめんなさいっ! あたし……!」


お父さんのことを思い出し、ぺこっと頭を下げたあたしは、また廊下を走り出した。


「廊下は走っちゃいけないんだよー」

なんて、彼の声を背中で聞きながら……。

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