Ghost Lovers


――でも、それからは速かった。
あまりの速さに、気を失いそうになったけれど
何とか持ちこたえて。

山の入口まで辿りついたとき
ようやく楼は私を肩からおろして
さっさと先に歩いていく。


「ま、待って…!」


背中に呼びかけても、立ち止まることも振り返ることもしない。
なんて冷たい狼なんだとキッと睨んだが
その視線は楼には伝わらなかった。





「全く、薄情な狼っ!」


町は昼時だからか人気が多かった。
結局あの後、町まで連れて行ってもらったけれど…
そのまま、楼はどこかへと姿を消した。


まるで魔法のように、「ドロン」と。


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