Ghost Lovers
前を向いているからちゃんと表情は読み取れないが
きっと楼のことだ。
眉間に皺を寄せて捻くれていることだろう。
「何だァ?今更。助けちゃ悪かったみてぇな言い方しやがって。」
「そ、そんなことないけど…!」
ありがとう、って言いたいのに。
どうしてか言う勇気が出ない。
たった一言に抵抗を感じるのは何故――?
「っ…ねぇ、」
「あ?」
そんな戸惑いを覆い隠すつもりで、
軽く楼の背をポンポンと叩く。
「私、妖怪に日常生活で襲われたの…初めてだったよ……。」
楼は気にした様子もなく
私の言葉に対して
どこか呆れたように呟いた。
「お前はもう、フツーの人間じゃねぇんだよ。」
「え…、どういうこと…?」
走ったまま、器用に首だけで振り返って
ギラリと光る鋭い牙を見せ、笑った。
(狼が”笑う”というのもおかしいのだけれど)
「早速、妖怪共に目を付けられてる。」