Ghost Lovers
”妖”
ここ最近では、何だか耳に懐かしい響き。
思わず一瞬呆気にとられた。
立ち上がった凜は、眉間に寄せていた皺を徐々に緩めると
漆黒のジャケットを着直して
背中の羽根を広げた。
「小町。」
「は、はいっ?!」
いつになく真剣な凜の雰囲気に押され、
素っ頓狂な声を上げてしまう。
そんな私を怪訝そうに見ながら凜は、静かに言った。
「お前はここにいろ。」
絶対に出てくるな、とその目が言っていた。
私は緊張してドクドクと鼓動を打つ胸を抑えて、
小さく頷く。
それを確認し、凜はキッチンから消えた。
「……本当だ。」
何となく、感じる。
ここにいる三人のものではない
異世界の――気配。
妖が、いまここにいる。