Ghost Lovers
一瞬、呆けた。
何でそんなことを尋ねるのか?
ここはゴーストホテルだ。
泊まる以外に何があるんだろう。
「え…えぇ。もちろんです。」
私がそう答えた途端、貞子の表情が
少しだけ明るく輝いたように見えた。
胸元で握りしめた手が微かに震えていた。
「貞子…さん?」
「え、あ…ぁ…ありがとう、ございま…す。」
俯いているせいで、長い髪が彼女の顔にかかり
表情をうかがうことができない。
でもその声色は、まるで泣いているような――しかし嬉しそうな。
私はもう一歩、彼女に歩み寄った。
「わ…っ、私…
他の人とこうしてお話、っしたのも……
もう…何十年ぶり、で…」
「嬉しくって……」
顔をあげた貞子の顔は
ちっとも怖くなんて感じなかった。
すごくすごく、幸せそうに笑っていたから。