Ghost Lovers

「え――…」


その言葉に、思わず後ろの凜を見る。
彼は私に視線を向けただけで、
何も答えを返さなかった。


「私、とても美に貪欲だったのです…
 自分の口が小さいのが嫌で、それで、」
「魔女か悪魔と契約したのか?」


ふいに凜が冷めた口調で聞き返した。
貞子は一瞬目を丸くして、
やはり掠れた小さな声で「はい」と答える。



「”美しくなりたい”と言ったら、
 願いを叶えてやる、と…」



そこまで言って、貞子は部屋のベッドに腰かけた。
膝に両手を添えて、背中を丸める。
そして長く垂れた髪――


美しいどころか、それは何とも不気味な姿だった。

< 157 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop