Ghost Lovers
「今の私は、年をとりません…。
美しかった時のまま、時間を止められてしまった…」
でも、
「その代償は、人間を捨てることでした。」
ぽたぽたと床に落ちる雫は
雨に濡れた髪からなのか、
その髪に隠された目からの涙なのか
私には、分からなかった。
人間であったのに、恐れられる姿に変わり果てた彼女は
もう人間には戻れない。
自分の欲深さを嘆くように
貞子は両手で顔を覆った。
「どこにも、行くあてがなかったのです…
雨も降ってきて、途方に暮れていたら、」
ここから、人間の気配がした。
ふいに顔をあげた貞子の瞳に私が映る。
その真っ直ぐな視線に、
少し心が揺らいだ。
恐怖は、いつの間にか薄れていた。