Ghost Lovers


……瞬間、移動?


さっきまであの玄関ホールの中央にいたはずなのに。


「ちょ…っ!離し、」


狭い階段の隅に、何故か口を抑えつけられた状態で
突然押し込められた私。

抗議の声を上げようとしたが、
グッと口を押さえる手に力を込められ、
冷めきった鋭い視線が私を射すくめた。


「ちょっと黙ってろ……」


私に覆いかぶさるように向かい合った彼は
眉間に皺を寄せて
睨むような視線を周囲に向ける。


一気に空気が変わった――そんな感じがした。



(でも…っ顔近い、顔!!)


呑気なことを言っていられる雰囲気ではないけれど
真剣で、でも綺麗な顔が間近にあって
私の心臓はもうショート寸前。



「おい……誰だァ…?女の叫び声が聞こえたが…」
「まだ昼じゃーん。うるさいなー。”凜”、いないのー?」


(凜……?)


そのとき、階段の上からゾロゾロとまた違う声が聞こえてくる。
私も思わずビクッと体を強張らせて
さすがに何も言葉を発することは出来なかった。



――この家、まだ何かいる。




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