Ghost Lovers

…と叫んで今にも逃げ出したいのに
顔の真横寸前に置かれた手と、
首元の爪がそれを許さない。

視線の先には、鋭く尖った長い爪。
それで私の首なんて
あっさりと傷つけられてしまいそうなほど――


(やっぱり、この人……人間じゃない。)



「た……ただの人間です。」
「嘘をつけ。」
「ほんとです…。」
「俺たちが見えない人間ならば…そのまま追い払ってやるところだが、」


じっと見返すと、
相変わらずの冷めた瞳が私を睨んだ。


「俺たちを祓いに来たのなら、ただでは置かない。」



――祓う?!

陰陽師とかエクソシストとかそんな感じですか?!


「そ……そんな風に見えます?」


自分でも何を言ってるんだろう。

こんな綺麗な顔をしていても、この人は明らかに悪魔。
……妖怪だ。



(……怖い…。)



雰囲気が違う。
禍々しくて、人間では考えられないような…
初めてこの洋館を見たときと、同じような闇が感じられる。



――とんでもないところに、迷い込んでしまったんだ。


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