Ghost Lovers
喜代が下に向かって叫んでいるので、
私も釣られて上から声の主を覗きこむ。
「また女のうっせぇ叫び声が聞こえてきたもんだから、起きちまったじゃねぇか!!
一体どこのどいつだァ!!」
(どうも、すみませんでしたね!)
心の中で嫌味っぽく謝りつつ、
視線の先には青年の姿。
犬歯をむき出しにして、怒鳴り散らす彼は
黒く、長めの髪を逆立たせ、
満月のような金色の瞳を、ギラギラと輝かせていた。
大柄で厳つくて、そこらへんの不良みたいな容姿。
でも、ここにいるからには
人間なわけでは決してないだろう。
その逆立った髪がまるで、狼の毛並みを連想させる。
「オイ、喜代ーぉ!何で珍しく蛇に戻ってんだー?」
「蛇じゃない!!」
「どっちでも一緒だァ!……と、思えばこれはこれは……」
楼、と呼ばれた青年と
捕まったままの私の視線があった。
「人間の女じゃねぇかァ……」
――終わった。
私の人生、やっぱりここで終わりなんだ。
ペロリ、と舌なめずりした楼の口元。
その鋭い牙を見て、そう思った。