Ghost Lovers
頭上の喜代に向かって呟いた言葉と
身の毛もよだつ、楼の笑み。
蛇に睨まれた蛙のように、私は身動きがとれなくなる。
その間に、楼の髪や牙は姿を変えて
みるみる大きな狼男へと変貌していく。
顔も何もかも違うのに、瞳の金色だけは
相変わらず綺麗に輝いていた。
「オレは狼男の楼。どこから迷い込んだのかは知らねぇが…
美味そうな娘だ……!」
「邪魔しないでって楼くん!」
二人の声が、重なる。
身軽に跳びあがってきた楼と、
徐々に迫ってくる喜代の、二人分の牙が
怯えきった私に近づく。
(助けるって……守るって言ったじゃん――…!!)
「「いただきマス」」
「嫌…っ!」
私の視界が、まるでスローモーションのように流れた。
声の限り、藁をも掴む気持ちで叫ぶ。
「凜ーーーーーッ!!!」