Ghost Lovers
「はぁ……「きっと緊張してるんだろうなぁ。
大丈夫!小町もきっと気にいるさ!!」
私の苦悩の溜め息を弾き飛ばすような
朗らかな父の言葉。
煙草をくゆらせながら微笑む父は
嫌いではないが本当にムカつく。
娘のこと、何も分かってないんだから。
「あっ!見えてきたわよー!」
着いてほしくないなどという私の願いも虚しく
キャッキャッと喜ぶ母。
いいねぇ君たちは。
そのどうせボロい空き家を管理するのは私なんだから。
助手席の母が指さしたのは、
先ほどからガタガタと揺れを増した山の奥。
樹海のような濃い森林を間を抜けて、
両脇には崖。
ぬかるんだケモノ道を、車で疾走する私たち。
……これ、大丈夫なの?!
あの映画のように、
あり得ない神様への道が開けてしまうのではないか?
私は思わず前の助手席を握りしめる。
そのとき、突然目の前の樹海が開けた。
振動ばかりに気を取られていた私は、
ふいに顔を前方に向ける。
「ちょっとーっ!この道、怖………、」
――言葉を、失くした。