Ghost Lovers


「何…アレ…」



そして、その霧が立ち上る右手を
凜は突然冷蔵庫の中へ突っ込んだ。

途端、冷蔵庫の中で溢れ出す黒い霧。
オオォォ――…という、雄叫びのような音とともに
冷蔵庫の中が黒で浸食されていく。
溢れ出た霧が、私の足元まで及んだ。


「小町ちゃん、危ないよ。」
「わっ…!」


霧が、私の足に触れるすぐそこまで迫っていたのを見た瞬間
咄嗟に喜代が軽々と私の体を抱え上げた。

食卓の上に立つ喜代は、
珍しく眉間に皺を寄せて
口元を袖で隠し、冷蔵庫を睨んでいる。


「ねぇ―…喜代、何?あれ。」
「あれはねー…」




悪魔の、力だよ




その響きと、今の目の前の光景が
何だか、恐ろしかった。


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