Ghost Lovers

霧が晴れる。

凜は何も言わずにかざしていた手を下ろした。

冷蔵庫の中でつい先ほどまで蠢いていたはずの
大量の虫たちは、跡形もなく消え失せて見えない。


「虫が…っ!」


凝視する私をよそに、
凜はじろり、と喜代を一瞥して冷めた声色で呟いた。


「お前の役目だ…喜代。」
「はいはーい」



命を奪うって…ただそれだけじゃないの――…?



あれだけいたはずの虫たちは、その亡骸さえ見えない。


(害虫だけど…)


あんなにも容易く存在さえ失ってしまうなんて。
それほどの“力”を、
あの悪魔は持っている。



…人間だってきっと一瞬で。


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