Ghost Lovers


「…まちちゃん、小町ちゃんっ!」


硬直してしまった私は
喜代が名前を呼ぶ声で我に帰った。


「え―…あぁ、ごめん…」


二人の訝しげな視線に、何でもないと手を振る。
凜がまだ私を見ているような気がしたけれど
彼の方を振り向こうとはしなかった。


気がつけば、今度は喜代が冷蔵庫の前に立っている。
ニコニコ顔で、どこか自慢気。


「喜代…?」
「小町ちゃん、見ててー!」


手招きされて、恐る恐る冷蔵庫と喜代に近づいていく。
何だか、さっきまで真っ黒だった冷蔵庫が怖い。
私から少し離れたところにいるであろう――…凜も。


恐怖を振り払うように、
ぴったりと喜代の後ろにひっつく。

確かに喜代も私を食べようとした龍だけど
どうしても悪い子には見えないんだ。
これを凜に言ったら、どうせ『油断するな』とか言われるんだろうけど。

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