Ghost Lovers



そのとき、またオオォォ―…という不気味な音がして
ちらり、と背後を見れば
凜がまたあの黒い霧を右手から出して
今度は調理台の方を覆っていた。


――また、生き物が消えていく雄叫びが聞こえる。




「僕が清める力を持っているように、
 凛くんは”不幸”を司る力を持ってる。」


私の心境を察してか、どこか喜代の声色が優しくて…真剣。
切なそうに、凜の背中を見つめる視線に
何故だか心が痛んだ。



「妖怪には、それぞれ力があるんだよ。」



「僕だけじゃあ…綺麗になっても、虫は消えない。」



結局、食べられない。

そうだろ?と諭すように、喜代は言った。
こくん、と私は素直に頷いてしまった。

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