Wolf..
リビングへと向かう階段を降りると、フワリと鼻の横を、コーヒーの匂いが通る。
「由羽(ユウ)、おはよう。」
「ん。おはよ…」
食卓テーブルで豪快に新聞を広げるお父さん。
すでに用意されている朝食は、すっかり冷めきっていた。
「起きるの遅かったな。」
「うん。完全遅刻。」
お父さんは、新聞に目を落としながら、優しく微笑む。
遅刻することを怒りもせず、ただ笑うお父さんが大好きだ。
だから、冷めた朝食を頬張りながら、少しの罪悪感。
チクチクってね。
「いってきまぁす。」
「おう。バシッと叱られてこい!」
「え〜…」
パジャマで仁王立ちする姿も、俺にとっては尊敬できる姿で。
まだ重たい瞼を擦りながら、学校へと向かった。