王子様のKiss

靴を脱ぐため、座り込んだ。

…夢夏が頭の中で回ってる
俺らしくねぇな…

心のなかで自分で笑う。


「…よぉ」
「!?」


いきなり後ろから誰かに声をかけられ、
瞬時に振り向く。


「随分幸せそうな後ろ姿だったもんだから、声かけちまった!…なんかあったか…?」


…よぉ、と声をかけられたときとはちがく、
明るい口調で話しだす。

確かに俺は幸せだったかもしれない。

好きになっていいかって期待していたかもしれない。

でも、そんな思いは、全部ぶっ飛んだ。
あいつの…
目の前にいるこいつの…
嘲笑うかのような顔を見て。


「別になんもねぇよ…」


そうだよな…無理に決まってる。


こいつがいるもんな。


夢夏は…

傷つけらんねぇ…



「……兄貴」
「なんだ、いいことがあったのかと思ったのに!
そんな暗い顔すんな!」


はははっと笑ってどこかへ去った兄貴。


そうだ…
いっつも俺は、

大事なものを…

…兄貴に取られるんだ。


はあ…
無理だな…恋なんて…
だいたい、今のは恋じゃねぇ。

気になってなんかいねぇ。
そう、信じる。

いや…そう信じた。


「…かったりぃー!」

俺は、部屋に戻った。

悪ィ、俊介。
やっぱり俺は、あいつの存在が怖ぇ。

情けないけどな…

あいつからは逃げらんねぇよ……
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