王子様のKiss
夢の中、過去の中。
【夢夏Side】
「ただいま――!!」
そう声を張り上げて、すぐ階段をあわただしく上り、
自分の部屋に入った。
バンッ!
勢いよくドアが閉まった。
「はぁ…!」
一人ため息をつく。
驚きと不安と…少しの安心感が交ざったため息。
それは、さっき拓真に抱き締められた時と同じ気持ちだった。
「びっくりしたよお…」
あんなことされたのは、何年ぶりだろう……
あんな風に優しく抱き締められたのは…初めてかもしれない。
頭おかしくなっちゃう…
なんで私はあの人をあんまり恐がらないんだろう。
なんで私はさっき安心感を持ったんだろう。
なんで…男なのに…
最近直ってきてるのかな?苦手なの……
私はふわふわの、洗いたての布団が敷かれているベットに飛び込んだ。
「うーん…」
どうしてだろう…
なんでだろう……
頭の中では同じようなことが繰り返し、課題になる。
「…まあ、いっか!」
そう言い、枕に顔を押しあてる。
そうすると、眠気が襲ってきた。
「…また…話せるかな…」
確かに私は、拓真に触れられると、怖くてしょうがない。それは他の男子も。
でも、拓真と話ならできる。他の男子は無理だ。
拓真は…みんなと違う……安心できる…優しい…表情だか…ら……
いつのまにか私は眠ってしまった。
そして…、
見たくもなかった、
夢の中へと入っていった。